赤外線による雨漏りの調査には、赤外線サーモグラフィー
(FLIR)を使用することがあります。
赤外線とはある物質から放射される目に見えない光の温度のことで、赤外線サーモグラフィーはその温度を測るための計測器です。壁面など物質から放射される光の温度分布を、モニターにカラフルな図でわかりやすく表示してくれます。
さて、なぜこの「赤外線サーモグラフィー」で雨漏りの調査ができるのでしょうか?
温度を測定することと雨漏りにはどんな関係があるのでしょうか?
赤外線では雨漏りの原因を
発見することはできない!?
赤外線サーモグラフィーの高性能化で、これを使った各種調査はどんどん普及しています。
しかし
赤外線サーモグラフィーは、雨漏りを直接測定して発見する魔法の機械ではありません。
赤外線では
「雨漏りの原因である『水の存在』を直接発見する」ことはできないのです。
ではどうして、雨漏り調査に赤外線サーモグラフィーが使われるのでしょうか。
赤外線サーモグラフィー調査には
調査に適した条件がある
雨漏りである
「水」は気化(蒸発)するときに熱を必要とするため、周辺から温度を奪います。
例えば雨に濡れたときに身体が冷たくなりますね。それは濡れた水が気化・蒸発していくときに身体の熱を奪うからです。
赤外線サーモグラフィーによる雨漏り調査は、この原理を利用して行います。
水に濡れた壁紙や木材部分の温度は自ずとほかの部分より下がり冷たくなっているので、赤外線サーモグラフィーのモニターに温度差が現れるからです。
赤外線サーモグラフィーによる雨漏り調査は、おもに下記の条件で判断が可能となります。
- 現在、雨が漏れてきているとき
- または散水調査をしているとき
いままさに雨漏りしているときは、雨漏り部分が濡れているので温度差が生じています。
よって雨漏りしているとき、もしくは雨漏り直後でまだ濡れている状態であれば、赤外線サーモグラフィーで調査は可能です。
散水調査の場合は、雨水が壁紙や木材部分水が染みこんで壁の表面まで温度が下がってきた場合に計測が可能です。
したがって実際の風雨を想定して、高圧洗浄機であらゆる角度から大量な水を吹き掛ける散水を行い、壁面の温度変化は赤外線サーモグラフィーで都度測定しながら確認していきます。
具体的な所要時間は家の造りや原因箇所の特定難度により異なります。
一般的に木造で原因箇所の想定しやすい場合で10分程度、そうでない場合は20~30分程度散水すると、10~30分程度で壁面などに温度変化が現れます。
RC(鉄筋コンクリート造)の場合は一般的に木造より長めで、20~30分散水すると30~40分程度で壁面などに温度変化が現れてくることが殆どです。
温度変化が現れない場合は、これらの手順を数回繰り返します。
このとき、原因特定が速やかに進めば調査時間も短縮し、特定が困難な場合はお時間を要することあります。平均すると、調査には1.5~3時間必要とする場合が大半です。
また雨漏りを計測するための赤外線サーモグラフィーも、かなりの高性能のものが必要となります。
微妙な温度差を検知できること、測定物とは関係のないほかの赤外線の影響を受けにくいこと、が測定器に求められます。
まとめますと、
赤外線サーモグラフィーによる調査は、雨漏りの原因となっている箇所が濡れているときにだけに有効ということです。
赤外線サーモグラフィーによる
雨漏り調査の利点
赤外線調査は建物を壊さず、非破壊で簡単に調査ができることが利点です。高精度かつ意味のない開口調査をしないため、少ない調査費用で雨漏りの原因を特定できます。
- 正しい赤外線サーモグラフィーの使い方を知っていること
- 散水調査を含めた専門の調査方法を知っていること
- 雨漏りの原因、事例を多数知っていること
赤外線による調査は、雨漏りの仕組みと測定器の仕様を知っていればそれほど難しいことではありません。
ただしどなたでも雨漏りの特定や原因を見つけるには至らず、経験値が必要であることも確かです。
調査に多大な費用をかけることもなく短時間で的確な調査が可能な赤外線サーモグラフィーによる雨漏り調査は、今後どんどんと増えていくと思います。